160 テニス肘 上腕骨外側上顆炎と上腕骨内側上顆炎(ないがいそくじょうかえん)
たとえば、MRIで上腕骨外顆部に骨挫傷が認められたケースにおいて、上腕骨外顆部に、骨折の一歩手前、骨挫傷となる強い衝撃、打撃を受け、事故受傷をきっかけに、左上腕骨外側部に付着している筋肉に微小な断裂や損傷をきたしたような場合であれば、傷病名は、左上腕骨外側部骨挫傷、左上腕外側上顆炎となります。
適切なリハビリを行えば、後遺症を残すことは少ないと思います。
本来のテニス肘には、バックハンドストロークで肘の外側を傷める外側上顆炎と、フォアハンドストロークで肘の内側を傷める内側上顆炎の2種類があります。
いずれも、ボールがラケットに当たる衝撃が、手首を動かす筋肉の肘付着部に繰り返し加わることによって、微小断裂や損傷をきたし、炎症を発生するものです。
前者では手首を背屈する筋肉がついている上腕骨外側上顆、肘の外側のでっぱりに、後者では手首を掌屈する筋肉の付着部、上腕骨内側上顆に発生するため、それぞれ上腕骨外側上顆炎、上腕骨内側上顆炎ともいわれます。
テニス以外でも、包丁を握る調理師や手首を酷使する仕事で発症しています。
長時間のPC操作の繰り返しによっても、テニス肘は発症しています。
手首と肘の力を、繰り返し酷使することで、筋や腱の変性や骨膜の炎症が引き起こされるのです。
当然ながら、変性は、加齢によっても起こります。
症状は、手首を曲げる、回内・外の動作で、肘に痛みが走ります。
そして、雑巾を絞る、ドアノブを回す、ペットボトルのキャップを回すことでも痛みが生じます。
抵抗を加えた状態で手首を背屈させるトムセンテスト、
肘と手指を伸ばし、中指を押さえる中指伸展テスト、
肘を伸ばし、椅子を持ち上げるチェアーテスト
これらの検査で、上腕骨外側・内側上顆部に痛みが誘発されます。
炎症所見は、MRI、エコー検査で確認することができます。
治療は、大多数が保存療法です。
局所を安静下におき、消炎鎮痛薬の内服や外用、その後は、前腕や手関節を曲げるストレッチ、温熱、低周波、レーザー光線などのリハビリ、エルボーバンドの装着などが行われています。
テニス肘で、後遺障害を残すことは、常識的には考えられません。
上腕骨外側上顆炎と上腕骨内側上顆炎における後遺障害の後遺障害のポイント
1)交通事故で多発している傷病名ではありません。
受傷直後から正しい保存療法が選択されれば、大多数は6カ月以内に改善が得られています。
2)しかし、問題となるのは、きちんと傷病が診断されず、放置されたときです。
6カ月を経過しても、手首を曲げる、回内・外の動作で、肘部に疼痛があり、そして、雑巾を絞る、ドアノブを回す、ペットボトルのキャップを回すことができないときは、後遺障害を申請します。
炎症所見は、エコー検査で立証しますが、6カ月を経過しており陳旧性=古傷所見では、エコー検査で発見できないことがあります。
多くは、骨挫傷を伴っており、そうなるとMRI検査が有用です。
立証できた炎症所見の大きさに影響されますが、肘の神経症状として、14級9号、12級13号が認定される可能性があります。
3)肘関節の機能障害で12級6号が認定されないかは、個別に検討しなければなりませんが、立証された器質的損傷が炎症所見であれば、追加的な治療で改善が得られるので、機能障害ではなく、神経症状として捉えることになるのが通常です。
この記事を書いた人
弁護士法人江原総合法律事務所
埼玉・越谷地域に根差し、交通事故に豊富なノウハウを持つ江原総合法律事務所の弁護士までご相談下さい。交通事故分野における当事務所の対応の特徴は、「事故直後」「後遺症(後遺障害)の事前認定前」からの被害者サポートです。適切なタイミングから最適なサポートをいたします。