158 上腕骨遠位端骨折 (じょうわんこつえんいたんこっせつ)
上腕骨の遠位端部は、前腕の尺骨と橈骨とで肘関節を形成しています。
1)上腕骨顆上骨折 (じょうわんこつかじょうこっせつ)
上腕骨遠位端骨折では、上腕骨顆上骨折・上腕骨外顆骨折の2種類があり、交通事故では、自転車やバイクの転倒時の打撃で多発しています。
肘関節の痛みや腫れ、可動域および運動の制限が主たる症状で、単純XP撮影で診断が可能ですが、亀裂骨折では発見できないこともあり、CT撮影が有用です。
徒手整復を行い、骨折部位をギプスで固定する方法と、骨折した方の腕を上から垂直牽引=上から引っ張る、による保存的治療があります。
ギプスで固定する方法は、徒手整復時に血管や神経を痛めつける可能性が予想され、血流のうっ滞を防止する意味からも、垂直牽引を行う治療先の方が圧倒的です。
上腕骨顆上骨折で、深刻な問題となる合併症および後遺障害は、フォルクマン拘縮です。
その他に、考えられる合併症は、正中神経麻痺・尺骨神経麻痺です。
先に説明の橈骨神経麻痺は、上腕骨顆上骨折では、ほとんど発生していません。
肘の骨折ですが、肘が内側に曲がったまま骨癒合するケースがあります。
肘関節の拘縮も多発しています。
2)上腕骨外顆骨折 (じょうわんこつがいかこっせつ)
肘関節の痛みや腫れ、可動域および運動の制限が主な症状で、単純XP撮影で診断が可能です。
外顆骨片には手指を伸ばす、手のひらを上に向ける回外筋が付着しており、受傷直後のX線写真では転位が見られないときでも、ギプス固定中に骨片の転位が進行することがあります。
転位が放置されたままでは、固定を続けても骨癒合は得られません。
成長につれて外反肘となり、運動制限と神経麻痺の原因になります。
したがって、上腕骨外顆骨折は、関節内の骨折につき、ほとんどのケースでオペが選択され、キルシュナー鋼線やスクリューなどを用いて内固定が実施されています。
受傷後6ヶ月で症状固定と成った場合、肘関節の機能障害で12級6号以上の認定となるケースが多い傷害です。
※外反肘(がいはんちゅう) 腕を伸ばすと、肘が異常に外側に曲がる変形障害のこと
上腕骨遠位端骨折における後遺障害のポイント
1)骨折が肘関節におよんでいないものは、一安心で、その後の骨癒合状況と肘関節の可動域をフォローします。
2)上腕骨顆上骨折は、小学校1、2年生の子どもに多発しています。
顆上骨折であれば、関節内骨折ではなく成長軟骨板にかかる骨折、つまり骨端離開でもありません。
フォルクマン拘縮を排除できれば、後遺障害を残すことなく治癒するのが一般的です。
多くは、子どもの飛び出しが原因であり、20:80、10:90等、過失割合を巡って争いが生じます。
3)顆上骨折、外顆骨折でオペが実施されたときは、骨癒合状況をチェック、いつ症状固定となるかが、後遺障害のポイントになります。
被害者が、お子様のケースでは、後遺障害を残すことなく、改善が得られることが多いようです。
関連する当事務所の解決事例
この記事を書いた人
弁護士法人江原総合法律事務所
埼玉・越谷地域に根差し、交通事故に豊富なノウハウを持つ江原総合法律事務所の弁護士までご相談下さい。交通事故分野における当事務所の対応の特徴は、「事故直後」「後遺症(後遺障害)の事前認定前」からの被害者サポートです。適切なタイミングから最適なサポートをいたします。