109 アキレス腱滑液包炎
オレンジ色 正常な滑液包
オレンジ色 腫れた滑液包
① 滑液包は、アキレス腱とかかとの骨の間に1つのみ存在しているもので、この滑液包が炎症を起こすと腫れて痛み、アキレス腱前滑液包炎を発症します。
② アキレス腱に対する強い圧迫が続くと、アキレス腱と皮膚の間に防護的に滑液包が形成されることがあり、この滑液包も炎症すると腫れて痛み、アキレス腱後滑液包炎を発症します。
アキレス腱と皮膚、踵骨の間には、液体で満たされた袋状の、滑液包があり、クッション材として摩擦防止の役目を果たしていますが、この滑液包が炎症を起こすことがあります。
この症例は、若い女性に多く、ハイヒールなど、かかとの後ろを支える部分が硬い靴で歩いていると、かかと後方の軟部組織が繰り返し圧迫され、アキレス腱に過度の負荷がかかることにより炎症するものと考えられています。
交通事故では、かかと部に対する直接的な打撲で発症しています。
外傷では、直後から症状が出現するのですが、外傷でないときは、症状は徐々に進行していきます。
症状は、腫れで赤くなり、熱感、かかと後方の痛みです。
炎症している滑液包が大きくなると、かかとの皮下に赤いしこりが出現、痛みが生じます。
炎症が慢性化したときは、腫れは硬く、大きくなり、赤色は薄れてきます。
症状の確認と触診がなされ、XP検査を行って診断されています。
踵骨骨折の可能性を除外する必要から、XP検査が行われているのです。
治療は、かかとの後方にかかる圧迫をなくす必要から、靴の底にヒールパッドを入れます。
これにより、踵骨の角度を前方向に変え、かかとに対する圧迫を軽減します。
アキレス腱滑液包炎における後遺障害のポイント
1)交通事故の衝撃力では、踵骨の骨折、アキレス腱断裂がほとんどで、滑液包炎は稀な症例ですが、適切な治療がなされれば、2カ月前後で治癒し、後遺障害が残ることは通常はありません。
2)打撲とは、外力により、皮下組織、皮下脂肪や筋肉などの組織の出血や浮腫を伴うことです。
大きな外力では、痛みも強く、数日後には皮下出血となり皮膚の色が変わってきます。
ときには、皮下出血が瘢痕を形成し、皮膚が固くなることがあります。
これを外傷後の硬結と呼ぶのですが、痛みを伴うことはなく、時間の経過で硬結は消失するのです。
したがって、本来であれば、硬結は後遺障害の対象とはなりません。
この記事を書いた人
弁護士法人江原総合法律事務所
埼玉・越谷地域に根差し、交通事故に豊富なノウハウを持つ江原総合法律事務所の弁護士までご相談下さい。交通事故分野における当事務所の対応の特徴は、「事故直後」「後遺症(後遺障害)の事前認定前」からの被害者サポートです。適切なタイミングから最適なサポートをいたします。