244 男性の生殖器
男性の生殖器は、精巣=睾丸、精巣上体=副睾丸、精管、精嚢、前立腺、尿道球腺、陰茎、陰嚢で成り立っています。
交通事故で想定される生殖器の外傷としては、
1)陰嚢と精巣の外傷
陰嚢は外傷を受けやすい位置にあり、交通事故では、強打することで発生しています。
精巣=睾丸の外傷は突然激しい痛みを引き起こし、吐き気や嘔吐を伴います。
単なる打撲で、精巣が破裂していなければ、安静と局所の冷却で、腫脹や内出血は自然に改善していきますが、出血が多く血腫が大きいとき、皮膚の傷を伴うときは、細菌感染の可能性が予想されるので、皮膚を一部切開してドレーン管を挿入、感染予防のために抗生剤を内服します。
損傷が激しく、精巣が激しく破裂していれば、摘出することになります。
触診、超音波検査などにより、精巣そのものの損傷の有無を診断します。
尿道、膀胱、精索、骨などの周囲の臓器の損傷の有無は、CTや造影検査が行われます。
2)尿道外傷
陰茎内の尿が通る管=尿道の外傷は、組織が瘢痕化して尿の流れが妨げられることがあります。
尿道外傷は、交通事故では、自転車、バイクと自動車の衝突で、股間を強く打ちつけることで発生することがあります。
3)陰茎挫傷
自転車、バイクの交通事故では、陰茎をすりむいた程度の挫傷が発生することがあります。
4)陰茎折症
勃起しているときに、強い外力が陰茎に働くことにより、陰茎海綿体=白膜に亀裂、裂傷が生じたもので、交通事故では想定されていない外傷です。
5)陰茎の切断
バイクの交通事故で、ガードレールに激突するなどで、陰茎が部分的または全体的に切断されることが、稀ではありますが、発生しています。
切断された陰茎の再接合は可能ですが、感覚や機能の完全回復は困難とされているようです。
男性、生殖器外傷による後遺障害の後遺症害のポイント
生殖器外傷に伴う後遺障害については、以下の3つに分類されています。
1)生殖機能を完全に喪失したもの、
2)生殖機能に著しい障害を残すもの、
3)生殖機能に軽微な障害を残すもの、
1)生殖機能を完全に喪失したものでは、7級13号、7級相当が認定されています。
①両側の睾丸を失ったものは7級13号、
②常態として精液中に精子が存在しないものは7級相当、
これは、男性で3.5グレイ以上の大量の放射線被爆を前提としたもので、交通事故では、全く、想定されていません。
※グレイ、Gy
吸収線量の単位で、治療を行わずに放置すると、3グレイ以上の被曝で死亡に至ります。
放射線は、ヒトのDNAを破壊し、それによりヒトは細胞分裂ができなくなり死亡するのです。
精子や卵子を形成する細胞が被曝を受けると死滅しますが、男性では、3.5~6グレイで、女性では、2.5~6グレイで永久不妊となると報告されています。
2)生殖機能に著しい障害を残すもの、
生殖機能は残存しているが、通常の性交では、生殖を行うことができないものを言い、①陰茎の欠損、②勃起障害、③射精障害の3つに分類され、それぞれ9級17号が認定されています。
①陰茎の大部分を欠損したものは9級17号、
②勃起障害を残すもの、以下のいずれにも該当するものは9級17号、
夜間睡眠時に十分な勃起が認められないことがリジスキャンRによる夜間陰茎勃起検査により証明されており、支配神経の損傷など勃起障害の原因となる所見が、会陰部の知覚、肛門括約筋のトーヌスおよび球海綿反射筋反射による神経系検査プロスタグランジンE1海綿体注射による各種の血管系検査以下の検査のいずれかにより立証されていることが、認定の要件です。
③射精障害を残すもの、次のいずれかに該当するものは、9級17号、
尿道または射精管が断裂していること、
両側の下腹神経の断裂により当該神経の機能が失われていること、
膀胱頚部の機能が失われていること、
3)生殖機能に軽微な障害を残すもの
通常の性交を行えるが、生殖機能に僅かな障害を残すもので13級相当となります。
※一側の睾丸を失ったもの、亡失に準じる程度の萎縮を含みます。
上記をまとめます。
生殖器の障害のみを残す者で、生殖機能を完全に喪失したものに該当するときは、その他の生殖機能の障害に該当するときでも、7級相当で止まります。本件では7級相当が最上位等級となります。
この記事を書いた人
弁護士法人江原総合法律事務所
埼玉・越谷地域に根差し、交通事故に豊富なノウハウを持つ江原総合法律事務所の弁護士までご相談下さい。交通事故分野における当事務所の対応の特徴は、「事故直後」「後遺症(後遺障害)の事前認定前」からの被害者サポートです。適切なタイミングから最適なサポートをいたします。