23 手根骨の骨折 TFCC損傷
TFCC(Triangular Fibrocartilage Complex) =三角線維軟骨複合体は、手関節の小指側、橈骨・尺骨・手根骨の間に囲まれた三角形の部分にあり、橈尺骨のスタビライザーの役目、回内・回外時の尺骨遠位端のクッションやベアリングとして働いています。
TFCCは、関節円板といわれるもので、骨では硬すぎるので、成分は、三角線維軟骨複合体、膝の半月版に相当する軟骨組織です。
自転車、バイクなどの被害者が、交通事故で転倒した際に、手をつくことで多発しています。
覚えることではありませんが、TFCCは、尺骨三角骨靭帯、尺骨月状骨靭帯、掌側橈尺靭帯、背側橈尺靭帯、関節円板、尺側側副靱帯、三角靱帯の複合体です。
現在では、専門医であれば、この損傷に対する治療法は確立されています。
TFCC 損傷と診断されたときは、受傷直後は、安静、消炎鎮痛剤の投与、サポーターやギブスなどを用いて手関節を保存的に治療します。
この治療で約70%の被害者に改善が得られています。
サポーターやギブスによる固定療法は、原則として3カ月であり、3カ月が過ぎても症状が改善されないときは、手術が適用されています。
多くは、関節鏡視下手術により、損傷等した靱帯やTFCCの縫合・再建術や滑膜切除術が実施されていますが、TFCCの損傷レベルによっては、切開手術となります。
尺骨突き上げ症候群によりTFCCを損傷しているときは、尺骨を橈骨と同じ高さにする尺骨短縮術が行われており、これは、切開手術です。
高齢者では、TFCC が摩耗しているために、手術が不可能なこともあります。
手関節にステロイド注射を行う治療法もありますが、関節内にステロイドを注入すると軟骨を痛めることがあり、MRI で十分に評価をした上で注入されています。
TFCC損傷における後遺障害のポイント
1) 事故直後にTFCC損傷と診断され、サポーターやギブス固定、さらには関節鏡視下手術により改善が得られる被害者は、現実問題として一握りです。
TFCCは三角線維軟骨複合体であり、XPで確認できません。TFCC損傷以外に、頚部捻挫があれば、上肢~手指のだるさ、痺れ、痛みを訴える被害者もいます。
XPで確認ができない上に、深刻な激痛が無い状況ですと、「もう少し、様子を見ましょう」として、それ以上の調査を踏み込んで行わないケースが多いと思います。
2) 注目するのは、受傷直後から小指側の手首の痛み、手関節の可動域制限、握力低下を主治医に訴えていたのかです。
これらの自覚症状がカルテに記載されていれば、後は画像等により、TFCC損傷を立証することができれば、訴訟によらずとも等級の獲得が期待できます。なお、カルテへの記載がなくても、2カ月であれば、主治医も、当初からTFCC損傷があった旨診断してくれる可能性もあります。
しかし、4カ月以上経過すると、算定機構の認定の段階では、因果関係を理由に非該当とされる可能性が高いと言えます。
このような場合には、訴訟以外に方法は無くなります(なお、訴訟によっても、やはり因果関係が問題となるので、必ず勝てるわけではありません。)。
3) 日本手外科学会でも、鏡視下での手術は高度な技術が要求されること、そして、TFCC 損傷の手術を行える専門医が少ないことを問題提起しています。TFCC損傷の治療先については、ご相談いただいた際に、必要に応じて紹介することも検討可能です。
4) TFCC損傷が疑診される被害者は、受傷2カ月以内に専門医で診察を受けるべきでしょう。
因果関係の立証の問題だけではなく、治療の実効性という観点からも、早期に診察を受けるべきです。
専門医が卓越した技術で手術をするにしても、受傷から5、6カ月を経過すれば、損傷は陳旧化しており、劇的な改善は得られなくなる可能性が高まるためです。
この記事を書いた人
弁護士法人江原総合法律事務所
埼玉・越谷地域に根差し、交通事故に豊富なノウハウを持つ江原総合法律事務所の弁護士までご相談下さい。交通事故分野における当事務所の対応の特徴は、「事故直後」「後遺症(後遺障害)の事前認定前」からの被害者サポートです。適切なタイミングから最適なサポートをいたします。