3 バレ・リュー症候群と耳鳴り、その他の障害について
緑色の交感神経節が損傷することにより、バレ・リュー症候群を発症します。
頭痛は後遺障害の対象になるのか、耳鳴りはどのように評価されるのでしょうか。
頚部交感神経損傷を原因とするバレ・リュー症候群は、不眠が続くことから、頭痛が代表的ですが、重症例では、倦怠感、疲労感、熱感、脱力感、眩暈、耳鳴り、難聴、眼精疲労、流涙、視力調節障害、痺れ、肩凝り、背痛、腰痛、頭重感、動悸、息切れ、四肢冷感、食欲不振、胃重感、悪心、腹痛、下痢、便秘などの不定愁訴に、一気に襲われることがあります。
バレ・リュー症候群の諸症状は、麻酔科、ペインクリニックに通院、交感神経ブロック療法を続ければ、多くは、2カ月程度で改善を期待することができるでしょう。改善が得られるのであれば、まずは治療によって完治させるべきであり、後遺障害の対象とはされないことになります。
頭部外傷Ⅱ型以上を原因とする頭痛は、後遺障害の対象ですが、バレ・リュー症候群で、改善、完治が規定できるのであれば、後遺症の認定を目指すのではなく、適切な治療による治癒を目指すべきでしょう。
外傷性頚部症候群における後遺障害のポイント
1)バレ・リュー症候群の評価
交感神経異常を原因とするバレ・リュー症候群の不定愁訴は、後遺障害の対象とする前に、頭痛、眩暈、吐き気で苦しむ被害者は、整形外科以外に、担当医師にも相談の上、ペインクリニックに通院し、交感神経ブロック療法等で症状の改善を目指すべきでしょう。
2)耳鳴りは、条件が揃えば、12級相当です。
①耳鳴りでは、耳鼻科におけるオージオグラム検査で30dB以上の難聴を伴い、ピッチマッチ、ラウドネスバランスの耳鳴り検査で、耳鳴りが他覚的に立証されたときは、12級相当が認められています。
バレ・リュー症候群でも、耳鳴りを感じることがありますが、難聴を伴うことはなく、交感神経節ブロック療法で改善が得られるのが一般的なようです。
②自覚症状の訴えと耳鼻科における検査
通院治療先が整形外科でも、耳鳴りが有る場合には、事故直後から耳鳴りの自覚症状を訴え、カルテ等に残しておいてください。
そして、早期に耳鼻科を受診、オージオグラム検査を受けることが必要です。
症状の訴えがなく、2、3カ月を経過すると、事故との因果関係の立証が難しくなるからです。
受傷後に撮影したMRIで、C5/6/7の神経根の通り道が狭まっているとか、明確に圧迫を受けていることが、MRIの画像から確認できたときは、自覚症状に一致した画像所見(他覚的所見)が得られたことになります。
3)排尿障害、嗅覚の脱失
中心的な傷病名が外傷性頚部症候群であっても、排尿障害の症状があり、尿管カテーテルで強制導尿を実施している被害者には、11級10号が、嗅覚の脱失で12級相当が認定される可能性があります。
前者では、ウロダイナミクス検査で尿道括約筋の異常を、後者では、T&Tオルファクトメータで、嗅覚の脱失を立証します。
事故直後から自覚症状の訴えがあり、症状固定まで継続していれば、原因は特定できなくとも、自覚症状が検査で立証されていれば、損保料率機構調査事務所は等級を認定する可能性があります。
この記事を書いた人
弁護士法人江原総合法律事務所
埼玉・越谷地域に根差し、交通事故に豊富なノウハウを持つ江原総合法律事務所の弁護士までご相談下さい。交通事故分野における当事務所の対応の特徴は、「事故直後」「後遺症(後遺障害)の事前認定前」からの被害者サポートです。適切なタイミングから最適なサポートをいたします。