136 変形性膝関節症(へんけいせいしつかんせつしょう)

交通事故で、膝関節のプラトー骨折、脱臼、前・後十字靱帯や半月板を損傷しました。

 

※救急搬送された治療先に専門医が配置されておらず、結果、不適切な治療が行われた
※事故受傷で、膝関節部は不可逆的に破壊され、切断は免れたものの、大きな後遺障害を残した
上記の2つのパターンでは、示談締結後の2次性疾患として、変形性膝関節症が想定されます。

136-1.jpg正常なもの

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初期           進行期

 

※初期 軟骨がすり減り、間隔が狭くなる。
※進行期 骨棘形成が進み、骨同士が直接にぶつかる。
正常な膝関節の表面は、軟骨で覆われています。
軟骨の働きにより、衝撃を和らげ、関節の動きは滑らかです。
そして、滑膜から分泌される関節液により、大腿骨はアイススケートよりも滑らかに滑走しています。
関節液は、軟骨の成分であるヒアルロン酸を含んだ粘りのある液体で、膝関節の潤滑油と、軟骨に対する栄養補給の役割を果たしているのです。
変形の初期段階では、関節軟骨の磨耗は軽度なもので、自覚症状は、ほとんどありません。
軟骨の磨耗が、あるレベルに進行する中期となると、膝の曲げ伸ばし、立ち上がり、歩行中の膝にかかる負担が増加し、軟骨、半月板の変性による刺激によって、関節炎を発症します。
膝蓋骨周辺に水がたまり、膝が腫れ、膝を曲げ伸ばし動作での疼痛や可動域制限が生じます。
進行期に入ると、軟骨の磨耗がさらに進み、関節の土台の骨である軟骨下骨が露出し、骨そのものの変形である骨棘形成が見られます。
この段階に至ると、強い動作痛と大きな可動域制限により、日常生活は、大きく障害されます。
変形性膝関節症となると、膝の痛みのため、あまり歩かなくなり、脚の筋肉が衰えていきます。
膝の筋肉が衰えると、さらに、膝に負担がかかり、変形性膝関節症は進行するのです。
これらの悪循環を絶つには
摩耗した関節軟骨を元の完全な形に修復する方法は、現在のところ、ありません。
変形性膝関節症の治療は、痛みをとり、膝が完全に曲がりきらない状態や伸びきらない状態を改善して、膝の機能を高めることを目指して行われます。
治療方法は、保存的には、薬物療法、温熱・冷却療法、運動療法の3つの療法が基本となります。
しかし、これらは根治療法ではなく、対症療法です。
これらの治療でも痛みが改善されないときには、以下のオペが実施されています。
①関節鏡視下郭清術 デブリードマン
中期の変形性に対して選択されるオペで、膝関節に小さなカメラを入れ、変形軟骨を切除、半月板を縫合、切除するオペで、膝に小さな穴を数カ所開けるだけで、負担も少なく入院期間も短いのですが、交通事故による2次性疾患では、変形性が進行していることが多く、条件に適合する被害者は少ないようです。
②高位脛骨々切り術
O脚を矯正する手術で、ほぼ完治しますが、長期入院が必要で回復には半年近くを要します。
手術を受けられる人は限られます。

なお、膝関節症については、加齢を原因として発症することもあるため、事故による症状なのか、加齢による原因なのかが争われるケースもあります。このような場合には、事故と複合的な要因で症状が発症しているということで、賠償額が減額されるケースもあります。

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③人工膝関節置換術
変形性膝関節症が進行し、痛みで日常生活が困難になったときに選択するオペです。
高齢者でも受けられますが、耐久性の問題や、可動域が狭くなり正座ができなくなることなどがデメリットです。
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変形性膝関節症における後遺障害のポイント

1)変形性膝関節症では、示談から早くて3年、遅ければ10年近くを経過してのオペとなります。
この疾患は、交通事故後の2次性疾患ですから、交通事故との関係を立証すれば、新たな後遺障害は、加害者(保険会社)に請求できます。
例えば、人工関節置換では、8級7号、もしくは10級11号が認定されることになり、前回の認定等級との差額を請求することになります。
もっとも、だいぶ時間が経って発症するため、加齢性のものとして諦めてしまうケースや、示談書の控え、交通事故の一式記録は、残しているのか等で実際の賠償請求に困難を来すこともあります。
2)年数を経過しての事件記録の再調査しは、大変面倒なものです。
膝関節のプラトー骨折、脱臼、複合靱帯損傷などで、将来、変形性膝関節症が懸念されるときは、示談書に、「今後、乙に本件事故に起因する新たな後遺障害が生じた時は、甲は、別途賠償するものとする。」等の記載をしておいた方が良いでしょう。
3)通勤災害、業務災害で労災保険の適用を受けているときは、加害者との示談締結後に変形性膝関節症でオペを受けることになっても、再発申請書を提出すれば、治療費、治療期間中の休業給付が支払われ、オペ後の後遺障害部分の損害にも対応してくれます。
ところが、加害者側の任意保険会社との協議においては、これらの費用の負担はなく、あくまでも後遺障害部分の損害を請求するだけとなり、オペとリハビリの治療費は被害者の負担、休業損害も、社保・組合健保であれば、傷病手当金の請求をすることになります。
交通事故では、勤務先に遠慮して労災保険の適用を見送る被害者がおられますが、時効の問題もあるため、申請することをお勧めします。

この記事を書いた人

弁護士法人江原総合法律事務所

埼玉・越谷地域に根差し、交通事故に豊富なノウハウを持つ江原総合法律事務所の弁護士までご相談下さい。交通事故分野における当事務所の対応の特徴は、「事故直後」「後遺症(後遺障害)の事前認定前」からの被害者サポートです。適切なタイミングから最適なサポートをいたします。

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