301 醜状障害

醜状障害における傷病名は、顔面挫創、右頬部擦過傷など、読んで字のごとしであり、傷病名別アプローチは意味をなしません。
ここでは、以下の5つに絞って、後遺障害のポイントを解説していきます。
1)男女差を違憲とした新基準、
2)部位別後遺障害認定基準、
3)後遺障害診断書、記載の要領
4)他の認定基準との比較

 

醜状障害における後遺障害のポイント

1)男女差を違憲とした新基準について

「顔面の醜状痕に男女差を認めることは、男女平等を定めた憲法に違反する。
2010年5月27日、京都地裁は、労災事故で顔や頚部に大火傷を負った35歳の男性に対して、女性よりも後遺障害等級が低いのは男女平等を定めた憲法に反するとの、違憲判断を示し労災保険の給付処分を取り消しました。
2010年6月10日、厚生労働省は、この違憲判決を受け入れ、控訴しないことを決定、64年ぶりに醜状障害の等級認定基準は見直されることになりました。

①新基準

 

 

醜状障害は、2010年6月10日に京都地裁の違憲判決が確定しており、男女間格差は否定され、2011年5月2日、政令第116号により、以下の修正が加えられました。

①別表Ⅱ7級12号の「女子の外貌」を「外貌」に改めること、

②別表Ⅱ9級16号を9級17号に改め、9級16号は、「外貌に相当程度の醜状を残すものとすること、

③別表Ⅱ12級14号の「男子の外貌」を「外貌」に改め、14級15号を削除すること、

④別表Ⅱ14級10号を削除すること、

この政令は公布日=2011年5月2日から施行し、自動車損害賠償保障法施行令の規定は、2010年6月10日以降に発生した自動車の運行による事故について適用する。

 

②外貌に著しい醜状を残すものは、7級12号

 

外貌の著しい醜状とは、頭部では手のひら大以上の瘢痕が残ったとき、頭蓋骨に手のひら大以上の欠損が残ったときをいいます。

手のひらとは、指の部分を除いた手の面積で、大小の違いがありますが、被害者の手のひらの面積と比較して、等級が認定されています。

 

顔面部では、鶏卵大以上の瘢痕・5cm以上の線状痕、10円硬貨大以上の窪みを残したときは、7級12号に該当します。

耳殻軟骨部の2分の1以上の欠損、

鼻軟骨部の大部分を欠損したとポイント、著しい醜状に該当します。

 

③外貌に相当程度の醜状を残すものは、9級16号

 

新基準で新たに設定された等級ですが、答申では、「外貌に相当な醜状を残すものには、現在、外貌の著しい醜状として評価されている障害のうち、醜状を相当程度軽減できるとされる長い線状痕が該当する。」とあります。

 

これまでは、3cm以上の線状痕が後遺障害等級の対象であり12級が、5cm以上となれば7級が認定されていましたが、答申では、醜状を相当程度軽減できるとされる長い線状痕は、9級と認定したいようです。「相当程度軽減できるとされる長い線状痕?」それにつけても、曖昧な表現です。

 

 

④外貌に醜状を残すものは、12級13号

 

頭部では鶏卵大以上の瘢痕、または頭蓋骨の鶏卵大以上の欠損、顔面部にあっては10円銅貨以上の瘢痕または3cm以上の線状痕、頚部では鶏卵大面積以上の瘢痕で人目につく程度以上のものであり、12級13号が認定されます。

頭蓋骨に鶏卵大の欠損が認められても、この部分に人工骨がはめ込まれていれば、等級の対象となりません。

 

⑤2個以上の瘢痕や線状痕

 

交通事故では、顔面に複数の醜状痕を残すことも予想されるのですが、そんなとき、自賠責保険の運用規定では、「2個以上の瘢痕または線状痕が相隣接し、または相まって1個の瘢痕または線状痕と同程度以上の醜状を呈するときは、それらの面積、長さなどを合算して認定する。」と規定されています。

 

醜状痕の後遺障害認定は上記の醜状が存在することが前提ですが、さらに他人をして醜いと思わせる程度、人目につく程度以上でなければならないとされています。

 

例え、どんなに醜い醜状であっても眉毛・頭髪に隠れる部分は、計算対象から除外されます。

また、顎の下にできた醜状で、正面から確認できないものは、これも醜状痕としての後遺障害対象から除外されています。

 

⑥上肢・下肢の醜状

 

⇦右上のこの欄です

 

 

後遺障害診断書は、見開きのA3サイズですが、⑦醜状障害の記載欄は、右上の隅、4.3×4.5mmと非常に小さく、記載を受けても、大変見にくいのです。

 

5)他の認定基準との比較

①顔面神経麻痺

顔面神経麻痺は、本来は、神経系統の機能の障害ですが、その結果として現れる口の歪みは、外貌に醜状を残すものとして12級13号が認定されます。

 

 

 

 

 

まぶたの運動障害は、顔面や側頭部の強打で、視神経や外眼筋が損傷されたときに発症しています。

 

ⅰまぶたを閉じる=眼瞼閉鎖、

ⅱまぶたを開ける=眼瞼挙上、

ⅲ瞬き=瞬目運動

まぶたには、上記の3つの運動があり、まぶたに著しい運動障害を残すものとは、瞼を閉じたときに、角膜を完全に覆えないもので、兎眼と呼ばれています。

同じく、まぶたを開いたときに、瞳孔を覆うもので、これは、眼瞼下垂と呼ばれています。

単眼で12級2号、両眼で11級2号が認定されています。

これらも、上記等級と、外貌の醜状障害による等級の内、いずれか上位の等級が選択されます。

 

耳介の欠損

 

 

 

 

耳介軟骨部の2分の1以上を欠損したときは、耳介の大部分の欠損としては、12級4号ですが、醜状障害でとらえると、外貌に著しい醜状を残すものとして7級12号になります。

耳介の一部の欠損では、耳介の欠損としての等級はありませんが、それが、外貌の醜状に該当すれば、12級13号が認定されています。

 

③鼻の欠損、斜鼻、鞍鼻

 

 

鼻軟骨部の全部、または大部分の欠損し、鼻呼吸困難、または嗅覚脱失を残したときは、9級5号ですが、醜状障害ととらえたときは、7級12号が認定されます。

上記の等級は併合されることはなく、いずれか上位が選択されます。

鼻軟骨の一部、または鼻翼を欠損したときは、鼻の欠損としての等級認定はありませんが、外貌醜状では、12級13号が認定されています。

 

斜鼻                鞍鼻               鞍鼻

鼻骨の側面を打撃したことで、鼻骨が横にずれた形となり、斜鼻を残したとき

打撃が鼻骨の上からの打撃で、鼻骨が脱臼、陥没する鞍鼻を残したとき

鼻の後遺障害として等級の定めはありませんが、いずれも醜状障害として申請することになります。

程度により、12級13号、9級16号、7級12号が認定されます。

イラスト右端のような鞍鼻であれば、7級12号となります。

 

耳介や鼻の欠損として後遺障害を申請するのか、それとも、醜状障害として申請するのか、事前の検証が必要です。

 

 

 

 

 

 

 

 

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