後遺障害認定のポイント18) 手根骨の骨折 月状骨脱臼(げつじょうこつだっきゅう)


手首の付け根.gif

手首の付け根の骨は手根骨と呼ぶのですが、8個の小さな手根骨で構成されています。

これらの手根骨は2列に並んでおり1列目は親指側から、舟状骨・月状骨・三角骨・豆状骨、2列目は、大菱形骨・小菱形骨・有頭骨・有鉤骨と呼びます。

これらの手根骨はお互いに関節を作って接しており、複雑な靭帯で結合されています。

月状骨は、右手の背側では、舟状骨の右隣、有鈎骨の下部に位置しています。

 

手根骨脱臼は、月状骨が圧倒的で、月状骨周囲脱臼と呼びます。

手のひらをついて転倒した際に、月状骨が、有頭骨と橈骨の間に挟まれてはじき出されるように、手のひら側に転位・脱臼します。月状骨と橈骨の位置関係は正常ですが、月状骨とその他の手根骨との関係が異常となり背側に転位するもので、しばしば見逃されるので、注意しなければなりません。

月状骨周辺の橈骨遠位端骨折、舟状骨骨折を伴うこともあります。

 

疼痛、運動制限、圧痛、腫脹を発症、脱臼した月状骨が手根管に圧迫や突出したときは、手根管症候群を生じることがあります。

単純XPの側面画像で、月状骨が90°回転しているのが分かります。

徒手整復が治療の中心ですが、整復できないケース、再発予防・手根管症候群予防の必要から、手術を選択、靭帯の縫合なども実施されています。

 

近年、手根不安定症の発症を防止する観点から、手根骨間の徒手整復経皮的ピンニング=切開をしないで徒手で転位した手根骨を整復、皮膚の外からワイヤーで固定する方法、観血的靭帯縫合=切開手術で転位した手根骨を整復し、ワイヤーで固定、損傷した靭帯を縫合する方法、これらが積極的に実施されています。

 月状骨脱臼における後遺障害のポイント

 

1) 見逃されることが多いので注意しなければなりません。

手根骨は8つの骨で構成されており、交通事故では、舟状骨、月状骨、三角骨、豆状骨、有鉤骨、有頭骨で骨折が多発しています。

手根骨の骨折では、「主治医が見逃してしまう可能性がある。」これが共通した問題点です。

ともかく、2方向のXPでは判断が難しく、そして、主治医がCTMRIの撮影を決断するほどの強い痛みの訴えが、患者からなされないことが、見逃される原因となっています。

なんども繰り返してきましたが、ジクジクする痛みが軽減することなく続くのであれば、受傷2カ月以内に専門医の受診を受けるべきでしょう。

 

2) たとえばこのような事案が考えられます。

受傷から6カ月を経過した被害者が、相談に来られました。この相談者は、受傷2カ月目に専門医を受診し、傷病名は右舟状骨骨折、右月状骨周囲脱臼となっています。

 

元の病院に戻り、保存的にギプス固定がなされたのですが、右舟状骨はやや偽関節、右月状骨脱臼も少し飛び出しており、骨折部の痛みと右手関節の可動域制限を訴えています。

 

部位

主要運動

参考運動

手関節

背屈

掌屈

合計

橈屈

尺屈

40°

45°

85°

10°

25°

70°

90°

160°

25°

55°

 

左右手関節の可動域について、計測を行うと、右手関節の可動域制限は、健側160°に対して患側が85°2分の15°のレベルです。

ところが、掌屈と参考運動は、右がいずれも2分の1以下となっています。

右舟状骨は偽関節であり、右月状骨は脱臼が完全に整復されていません。

認定基準では、「主要運動のいずれかが2分の110°であっても、参考運動のいずれかが、2分の1以下に制限されていれば、1010号を認定する。」と明記されています。

つまり、このような事案では1010号が認定されるべきなのです。


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