13 上腕骨骨幹部骨折

上腕部、長管骨の中央部付近の骨折を骨幹部骨折と言います。
交通事故では、バイクの転倒で手や肘をついたとき、転落などで直接に上腕の中央部に外力が加わって発生しています。

図13-1.gifのサムネール画像

このような直達外力で骨折したときは、横骨折が多く、外力が大きいと粉砕骨折になります。
手をついて倒れたときは、螺旋骨折や斜骨折となります。
関節部に遠く、一般的に関節の機能障害を伴わないことが大半ですが、上腕骨骨幹部骨折では、橈骨神経麻痺を合併することが高頻度であり、要注意です。
橈骨神経は上腕骨々幹部を螺旋状に回っているので、骨片により圧迫を受けて、麻痺が発生しやすく、骨折部にはれ、痛み、皮下出血、変形、圧痛、異常な動きが現れます。

 

図13-2.pngのサムネール画像のサムネール画像

骨折部の上下の筋肉の力で骨片はずれて短縮します。
橈骨神経麻痺が起こると、下垂手といって手首や指が伸ばせなくなります。
さらに、腕を回旋して手のひらを上へ向ける回外運動もできなくなります。
XP撮影で骨折の位置と骨折型を確認すれば診断は容易、同時に、神経麻痺の有無も調べます。

図13-3.gifのサムネール画像 治療は、切開を伴う観血術によらない保存療法が原則です。
完全骨折でずれがあるときは、吊り下げギプス法といってギプスを骨折部のやや上から肘を90°にして手まで巻き、包帯を手首に付けて首から吊るします。
神経麻痺は一過性で、回復を期待できることが多く、まず骨折を保存的に治療しつつ、回復を待ちます。
回復の状況は針筋電図や神経伝導速度などの検査を行って検証します。

橈骨神経麻痺について、もう少し掘り下げて説明します。
橈骨神経は頚椎から鎖骨の下を走行し、腋の下を通過して、上腕骨の外側をぐるりと回り、外側から前腕の筋肉、伸筋に通じています。
橈骨神経は手の甲の皮膚感覚を伝える神経なのです。

橈骨神経の障害が起こる部位は、3つです。腋の下、Saturday night palsy(腕枕後のしびれ)の原因となる上腕骨中央部、前腕部です。
交通事故では、上腕骨骨幹部骨折(上腕骨の真ん中に近い部分)、上腕骨顆上骨折(橈骨と上腕の接続部に近い部分)、Monteggia(モンテジア・モンテギア)骨折等(尺骨骨幹部骨折と橈骨頭の前方脱臼を合併したもの)で発症しており、上腕骨中央部の麻痺が多いのが特徴です。
症状としては、手の掌は何ともないのに手の甲が痺れます。 特に、手の甲の親指・人差し指間が強烈に痺れるのです。
手首を反らす筋肉が、正常に働かないので、手関節の背屈ができなくなり、親指と人差し指で物をうまくつまめなくなり、手は、下垂手=drophand変形をきたします。
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橈骨神経の支配領域は、親指~薬指の手の甲側なので、この部位の感覚を失います。

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診断は、上記の症状による診断や、チネル(ティネル)徴候(放散痛の発生状況によって、神経の再生状況を調査する。)などのテストに加え、誘発筋電図も有効な検査です。
患部を打腱器で叩き、その先の手や足に電気が走ったような痛みを発症するかどうかの神経学的検査法をTinel徴候、チネル(ティネル)サインと呼んでいます。

治療ですが、圧迫による神経麻痺であれば自然に回復していきます。
手首や手指の関節の拘縮を防止する観点からリハビリでストレッチ運動を行います。
カックアップやトーマス型の装具の装用や低周波刺激、ビタミンB12の投与が行われます。

 

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カックアップ装具

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トーマス型装具

稀には、末梢神経が骨折部で完全に断裂していることがあります。
断裂では、知覚と運動は完全麻痺状態となり、観血術で神経を縫合することになります。
手術用の顕微鏡を使用し、細い神経索を縫合していくのですから、手の専門外来のある病院で手術を受けることになりますが、予後は不良です。

上腕骨骨幹部骨折における後遺障害のポイント

1) 粉砕骨折では、偽関節で8級8号の可能性があります。また、保存療法では、上腕骨の変形で12級8号等が想定されます。
しかし、一般的な横骨折では、偽関節や肩、肘の機能障害は考えられません。
骨折の形状と骨癒合を検証しなければなりませんが、後遺障害を残す可能性は低い部位です。

2) 橈骨神経の断裂による橈骨神経麻痺が認められるときは、神経縫合術を行うか、麻痺を前提に、症状固定として後遺障害を申請するかを検討することになります。
なぜなら、神経縫合術で完全治癒が期待されないからです。
完全な下垂手では、足部の腓骨神経麻痺と同じで、手関節の背屈と掌屈が不能となり、8級6号が認定されます。
不完全な下垂手でも、10級10号の可能性があります。

完全な下垂手が、神経縫合術で不完全な下垂手に改善、10級10号となっても、日常生活の支障に大きな違いはなく、損害賠償金だけが薄められた結果を迎えます。

 

この記事を書いた人

弁護士法人江原総合法律事務所

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