8 肩腱板断裂(かたけんばんだんれつ )

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肩関節は、骨同士が軟骨で接する関節面が小さく、腱板と呼ばれるベルトのような組織が上腕骨頭の大部分を覆うようにカバーしている構造になっています(上の写真をご覧下さい)。
腕を持ち上げるバンザイでは、腱板は肩峰、肩甲骨の最外側や靱帯からなるアーチの下に潜り込む仕組みとなっています。
アーチと腱板の間には、肩峰下滑液包=SABがあり、クッションの役目を果たしています。

肩腱板は、肩関節のすぐ外側を囲む、棘上筋、棘下筋、小円筋、肩甲下筋の4つの筋肉で構成されていますが、交通事故では、手をついて転倒した衝撃で肩を捻ることが多く、棘上筋腱の損傷もしくは断裂を引き起こすことが多いと言えます。

棘上筋腱は上腕骨頭部に付着しているのですが、付着部の周辺がウィークポイントで、損傷および断裂の好発部位となります。

ポイント8図2.gif

腱板の断裂は、一部であれ、激烈な痛みと腫れを生じます。
肩を他人に動かされたときに、特有な痛みが生じます。
腕を伸ばし、気をつけの姿勢で、ゆっくり横に腕を上げていくと、肩より30°程度上げたところで痛みが消失します。
また、完全断裂のときは、自分で腕を上げることはできず、他人の力でも、疼痛のため肩の高さ以上は上がりません。
医師は、肩が挙上できるかどうか、肩関節に拘縮があるかどうか、肩を挙上したときに肩峰下に軋轢音があるかどうかをチェックし、棘下筋萎縮や軋轢音があれば腱板断裂と診断しています。
XPでは、肩峰と上腕骨頭の裂陵が狭くなり、MRIでは骨頭の上方に位置する腱板部に白く映る高信号域が認められます。

断裂がある場合は、肩関節造影を行うと、肩関節から断裂による造影剤の漏れが認められます。
エコーやMRIにおいても断裂部を確認することができます。
腱板は年齢と共に変性するのですが、肩峰と上腕骨頭の間に存在し、常に圧迫を受けています。

 

腱板断裂における後遺障害のポイント

1) 肩腱板の部分損傷は、若年者であれば、大多数はリハビリ治療で治癒します。
事故直後は、痛みが強く、肩の可動域は大きく制限されますが、疼痛管理で炎症を押さえ、さらにリハビリで肩の動く範囲を取り戻していくことが大切となります。

 

2) 肩腱板の広範囲断裂で、どの姿勢でも痛みが強く、夜間痛で眠れない、腕の運動痛が堪えがたいときは、若年者に対しては、腱板修復術が適用されます。
ところが、中年以上では、肩関節の拘縮が懸念されることから、安静下で2週間程度の外固定が実施されるのが一般的です。

 

3) 肩腱板断裂は、MRIもしくはエコー検査で立証することを検討します。
医師が、XP検査で肩峰と上腕骨頭の裂陵が狭小化していることを指摘しても、損保料率機構調査事務所では、腱板損傷や断裂を立証したと判断してくれません。

 

4) 症状固定時期は、受傷から6カ月を経過した時点で検討します。
先にも述べましたが、症状固定の時期については、医師とも相談の上、リハビリによる回復の可能性を考慮におきつつ、早めに見切りを付けるのか、6ヶ月の時点で検討します。
後遺障害等級は、被害者が中年以上であれば、肩関節の機能障害で12級6号となることが大半です(上記のとおり、XP,MRI等により、断裂や損傷の立証がなされていることが前提です。)。
鍵盤断裂を理由として、10級10号より上位の等級が認定される事案は、とても少ないと言えますが、腱板の広範囲断裂、肩関節の脱臼、鎖骨の遠位端粉砕骨折等を合併しているときは、認定される可能性が高まります。
自力で、可動域を保持することはできず、医師が手を離すと腕は下降、断裂部に疼痛が発生するような状況(drop arm sign)であれば、上肢の3大関節中の1関節の用を廃したものとして8級6号の後遺障害等級が認められることもあります

 

この記事を書いた人

弁護士法人江原総合法律事務所

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